今回は、私たちの心と体のバランスを取り、力になってくれる、
<リソース>ということについて、書いていきます。
<リソースとは?>
リソース(資源)とは、<自分にとって、力になる、心地よいものや、こと>。
実は、この<リソース>、特別に大きなことでなくても、
例えば <今、ここで、呼吸をしていること>・・というような
一見ごく「普通」と思われることの中にも、存在しています。
大きな意味では、今・ここに<存在していること>。
・・呼吸をしていて、心臓が動き、意識 = いのち があること。
もうこれ自体が、リソースそのものだとも言えます。
そういう意味で、実は、リソースが「ない」人は、いません。
でも、これでは少し漠然としているので、もう少し具体的な例をお話しますね。
例えば、今、地面の上に、しっかり足の裏が乗っていて、なんだか「安心」する感じがあるとします。
この安心感は、からだで感じている「リソース」です。
セラピーの中では、このリソースから生まれる、「安心感」に気づいてゆくことで、
心身に残る、「トラウマ」のエネルギーとのバランスを取り、神経系を落ち着かせたり、
トラウマのエネルギーの解放につなげてゆくことも行っていきます。
しかし、これまであまり身体感覚を意識してこなかった方や、
過去に大きなトラウマ(小さなトラウマでも、何度も重なる体験など)があった方は、
初めは、「安心感」や身体の内側で感じる、<内的なリソース>は、見つかりにくいかも知れません。
それは、自然で、理由があることです。
というのも、身体は、あえて「感じにくく」することで、たとえばトラウマなどへの反応として起こる、
身体の「不快な感覚」から、「身を守る」働きをもっています。
そのため、たとえ安心という「心地よい」感覚であっても、いきなり「感じる」ことは、難しいこともあるからです。
ですので、そういう場合は、無理に「感じ」ようとしなくて大丈夫。
まずは<外的リソース>と呼ばれる、自分の外側・環境にある<心地よいもの。役に立つこと。>に目を向け、
少しずつ、それを育んでゆくことが、徐々に安心感を増やし、回復への力を育む、契機となっていきます。
ポージェス博士という、生理学的な神経の働きと、トラウマとの関連を論じている研究者は、
「(トラウマへの)治療とは、安全であると感じられるようになることである。」と語りました。
<リソース(心地よいもの)>に触れている時、私たちの心と身体は「ほっ」として、
自然と、自律神経系・心拍数・呼吸のあり方などが安定し、調整された状態になります。
この<リソース>によって育まれる心身の「安心・安全」な状態が、
トラウマなどストレスへの反応(戦う・逃げる・凍りつく)へ向き合う際の、大きな力となっていきます。
もちろん、心の深い部分の癒しや変容については、他者、専門家のサポートが重要ですが、
この「リソースに目を向けること」は、セルフケアとして、少しずつ、日常でも行えます。
日常生活でも、自分にとっての「リソース」に気づいてゆくことは、まるで「1円玉貯金」のように
地味なようでも着実に、心身の元気になる力=回復力(レジリエンス)を、増やしていくことに繋がるので、
お得(笑)です。
<宝もの(リソース)は、すべての中に>
私にリソースについて教えてくれた、あるトラウマセラピストは、
「リソースは、<無限>にある。そして、リソース構築は、<宝探し>のようである。」と話してくれました。
確かに、私たちの「リソース」という「宝」は
<無限に存在していて、これからも、たくさん見つけることができる>
と思うと、何だか励まされるようで、うれしくなります。
しかし、ときに、あなたの「宝もの」は、すぐには見つからないこともあるかも知れません。
なぜなら、思い出されない、「眠っている」宝も存在するからです。
なので、たとえもし今、自分にとってのリソースを、何一つ思いつかなったとしても、焦らないで大丈夫。
リソースは、今はそっと、眠っているだけなのかもしれません。
その場合は、「これまでに、何が良かったから、自分は生きてこられたのか?」
という問いに、少しだけ思いを巡らせてみてください。・・・
宝物(リソース)は、決して、なくなることはありません。
また、大切なことは、リソースには、とても個人差があるものだということ。
<自分にとって、心地よいか>が、大事なポイントです。
他の人が好きなものでも、あなたにとっては心地よくないかもしれません。
「今」の自分にとって、心地よいもの、役に立つもの。それこそが、あなたの力になってくれます。
もし良かったら、下記の<宝(リソース)探しへのヒント>を、
あなたにとってのリソースを見つける参考にしてみてください。
少しずつ、紙に書き出してみると、より「意識化」につながるので、おすすめです。
<リソース(宝)探しへのヒント>
<関係性>
自分がほっとして安心できる人。グループ。好きな動物。(想像上の生き物でも)。
これまで、助けになった人。 好きな有名人。尊敬する歴史上の人物。想像上のキャラクター。
これまで誰かにかけてもらった、うれしい言葉など。
たとえば、いつも行くパン屋さんの、あるレジの人の顔を見ると、なんだかほっとする、元気が出る・・。こんなこともリソースの一つです。
<場所>
ほっとする、お気に入りの場所。自分の部屋。図書館。公園。友人の家。カフェ。マッサージ屋さん。
温泉。お布団の中・・など、リラックスしたり、元気が出る場所、安全な「避難所」が、いくつかあると、心強いです。
<物>
役に立つもの。心と体がやすらぐ、よろこぶもの。
例えば、お気に入りの毛布、着心地の良い服、自転車、好きな食べ物、お守り etc・・・
<自然>
「自然」は、何よりパワフルなセラピストです🌿
外に出て、太陽の光をあびてみる。新鮮な空気を吸ってみる。
山や海、川のほとりを散策する。花、草などの植物を見たり、香りをかぐ。
土や砂の上を裸足で歩く(アーシング)。 雨の音を聞く。日向ぼっこ。ろうそくの火を見ること。
私は、好きな木に触れたり、好きな石のそばに座ってみると、落ち着いたり、元気が出ます。
<クリエイティブ>
好きな音・音楽を聞く。劇・映画をみる。本を読む。お笑いを見る。
声を出すことや、歌うこと。ふーっと長く息を吐くこと。散歩すること。
絵を描くこと。日記や文章を書いてみる。スポーツを見る。ダンスする。ヨガへ行く。
動きたいように身体を動かしてみる。
好きな食材で料理をしてみる・・など。
「気持ちが良い行動」は、「今・ここ」に集中しやすく、とっても創造的。
<スピリチュアル>
「スピリチュアル」というと、なんだか特別な響きがありますが、
日常の中でも、自然の中に居る時や、好きな人といる時などには、
何とも言えずほっとしたり、「自分」が広がるような気持ちになったりします。
私にとって、「スピリチュアル(神聖な)」体験とは、
<「私」を超える、より大きなもの・「自然」との「つながり」に気づくこと> です。
ある人は、「床掃除や、窓のガラス拭きを無心にしているときに、
なんとも自分が広がり、清められるような気持ちがする」と話していました。
これも「神聖さ」の体験の一つではないでしょうか。
メディテーション(瞑想)をすることで、より深く自己と「つながる」ことも、落ち着いた気持ちにしてくれます。
時には、お祈りをすること、より大いなる存在へ呼びかけること・・なども
私たちに、力を与えてくれます。
「リソースは無限にある」・・ということで、上に書いてある事にとらわれず、
あなたならではの、小さな心地よさ、「宝もの」を、少しずつ、見つけていってみてください。
きっと、あなたの日常の中に、あなたの「喜び」、「調和」のささやかな瞬間が、増えてゆきます。
そしてそれは、きっと、いつしかあなたの「大きな力」になってゆくことでしょう。