前回の、セルフ・コンパッション①のお話の続き・・・
<セルフコンパッションの3つの要素>
「セルフコンパッション」には、大きく3つの要素があると言われます。 (C.Neff)
それは、「マインドフルネス」、「共通の人間性」、「自分への優しさ」の三つです。
今回は、その中でも、一番初めに必要になる、「マインドフルネス」ということについて
お話ししたいと思います。
<マインドフルネスとは?>
マインドフルネスとは、シンプルに言うと、今・ここの体験に判断せずに「気づく」こと。
元々は、東洋の瞑想法であった「マインドフルネス」を、医療分野に広めた研究者、J・カバットジンの定義によれば、
マインドフルネスとは「今・ここの体験に心を集中させ、判断をせず、あるがままに観察すること」とされます。
ではなぜ、この「判断せずに気づくこと」=マインドフルネスが、一番初めに重要になるのでしょうか。
それは・・・
苦しみに「思いやり」を向けるには、そもそも「苦しみ」に対しても、落ち着いて「気づいている」こと
が、必要になるからです。
私たちは、日常、様々なこれまでの過去の体験からできた「思い込み」や、「感情的な反応」といった、
「レンズ」のようなものを通じて、外の出来事に「無意識」に反応していて、
「今・ここ」の体験には本当には、気づいていないことが多いものです。
そこで、まずは、「良い・悪い」などの判断をいったん、わきにおいて、
<自分にはいま、どんな「感情」・「身体感覚」・「思考」があるのか?・・>
と、少しずつ、「あるがまま」の自分の「体験」に気づきを向けてゆきます。
そうすることで、普段は気づかない体験、強い感情などに「巻き込まれ」ている体験や、
身体感覚レベルでの「苦しみ」の体験をも、落ち着いて気づくことができるようになってゆきます。
今ここの経験に、落ち着きを持って気づいてゆく事で、苦しみの体験をも受け入れ、
やがてそこへ、「やさしさ・ケアを届ける」という段階へと、すすめるようになってゆくのです。
例えば、今、強い怒りを感じているとします。
多くの場合、私たちは、その強い怒りの感情と一体化し、感情が引き起こす強い身体への反応、
(心拍数の上昇、呼吸の乱れ、視野が狭くなる、不快な感覚・・)などに、あっという間に巻き込まれてしまいます。
しかしながら、怒っていることに気づいた時、いま、身体にある感覚、感情に意識を向け、
「下腹部が熱い。」「今、怒りの感情がある。」・・・
と、
「気づく」ことは、「怒り」と「私」の間に少しの距離、「間」を作ってくれます。
それは、すっかり「怒り」に飲み込まれた(私=怒り)ような状態から、
「怒り」と距離を持って、「俯瞰」した視野へと、あり方を変化させてくれます。
そしてこの、マインドフルな「気づき」の状態は、脳・神経的にも「落ち着き」をもたらすための、
重要な影響を持つことがわかってきています。
このマインドフルな「気づき」の状態は、脳の扁桃体(緊急時・ストレス反応を起こす脳の部分)の活動を低下させます(J・Fisher)。
これにより、交感神経の活性化を落ち着け、より理性的な判断ができるようになるのです。
強い感情に飲み込まれて、自動的に反応や、行動をするのではなく、
「気づく」ことで心身がより落ち着いたあり方になり、多くの選択肢から行動を選べる状態へとなってゆくのです。
このように、マインドフルな「気づき」は、強い感情的反応や、苦しみがある時でさえ、
それらを迎え入れ、落ち着いた心身の状態をもたらします。
それゆえ、「マインドフルネス」な気づきの力を育むことは、
自分や他者へ、「優しさ」を向けるという選択肢を持つための、大切な要素になっているのです。
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次回は、セルフ・コンパッションの、残りの2つの要素、
「優しさを向ける」「共通の人間性」ということについて、お話ししていきますね。