先月は、「コレモ(Community Resiliency Model)」という、
神経系の働きを生かしたケアの方法を学びに、大阪へ行ってきました。
そこで、再確認したのは、やはりと言うべきか、「リソースの大切さ」でした。
リソースとは・・・「自分にとって心地よい、ものや、こと」。
自分の心と体が、安心したり、ほっとする事象、すべて。
この「リソース」、こう書くとシンプルなのですが、これが案外、奥が深いのです。
一体どうして、「リソース」に注目することが、セラピーで、そして、ひいては人生において、
欠かすことのできない、大切な事なのでしょうか。すこし詳しく、見ていきたいと思います。
<ネガティブ・バイアスの存在>
私たちの脳には、ついつい、ネガティブなことに焦点があたるという
「ネガティブ・バイアス(偏り)」なるものが存在しているといいます。
Rick Hansonという心理学者は、
「脳は、ネガティブな経験へのマジックテープであり、ポジティブな体験へのテフロンである。」
と言います。
「マジックテープ」は、一度ベリっとくっくと、中々離れないもの。
「テフロン」は、フライパンの表面みたいに、つるっとすべって離れるもの。
つまり・・・、それくらい
私たちの脳のあり方は、ネガティブな体験に気づきやすい。ポジティブな体験は、忘れやすい傾向がある・・
ということのようです。
このネガティブ・バイアス、かつては、私たちが進化してゆく過程で、
「危険」を察知し、避けることができるように、役立ってきました。
例えば、森に暮らしていた頃なら、「あの洞穴には、毒蛇がいたぞ!」と覚えておくことで、
その危険(トラウマ的な反応を起こさせるもの)には近づかないようにさせて、生存率をアップさせてきたといいます。
しかしながら、
現代においても、この機能(ネガティブ・バイアス)だけが強く残り、
日常的に、そういった「危険」への感覚・感情・思考に占領されている・・となると、困りものですね。
自分自身にも、思い当たるふしがあります。
なぜか、「できたこと」より、「できなかったこと」の方ばかりを思い出す。
なぜか、「自己否定的な声」がある。(・・ 特に自分がセラピーを受ける前には、たくさんありました。)
しかし、人間にはこういった脳の傾向があるのだ、と知ると、納得です。
ただ重要なのは、これは、単に「ポジティブ思考は良い」・「ネガティブはダメ」というお話ではないということ。
ネガティブなものを「抑圧」するのではなく、
「今・ここ」に、ネガティブなものがあることに気づきながら、
ポジティブなものがあることにも、意識を向けることができるという、
「選択」があることに気づくようになること、
そして「バランス」を取ることができるということに、大切な意味があると思います。
「リソース(心地よいもの・安全なもの)」の存在にも目をむけ、それを育んでゆくことは、
この両者のバランスをとることを助け、
人生をより調和的に生きることへの、力になります。
では次回は、この「リソース」ということについて、より詳しく、お話しますね。